大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)2033号 判決

検察官の被告人西坂松子同森田貴美恵同鈴木雅子同渡辺修吉に関する論旨について。

原判決は(1)被告人西坂松子が昭和二十七年七月下旬頃大阪市生野区林寺町二丁目三百七番地草竹ハルヱ方で同年十月一日施行の衆議院議員選挙立候補者伊藤忠輝の選挙運動者である同女から同候補に投票及び選挙運動をなされたいとの請託の趣旨の下に女物浴衣地一反(時価八五〇円相当)の供与を受け (2)被告人森田貴美恵が同年八月下旬頃森下恒子、草竹ハルヱの依頼を受け同市天王寺区真法院町七十番地鈴木雅子方において同女に対し前示伊藤候補の選挙運動をなすことの報酬として浴衣地一反(時価八五〇円相当)を供与し (3)被告人鈴木雅子は前記日時場所において草竹ハルヱから森田貴美恵を介して伊藤候補のため前示請託の趣旨の下に供与されることの情を知りながら浴衣地一反(時価八五〇円相当)の供与を受け (4)被告人渡辺修吉は同年八月中旬頃同市生野区林寺町一丁目八十八番地の自宅で草竹ハルヱから伊藤候補のため投票及び選挙運動をなされたいとの請託の趣旨の下に供与されることの情を知りながら女物単帯一本(時価千円相当)の供与を受けた旨の各公訴事実に対し右被告人等が起訴状記載のとおり物品の授受をなしたことは被告人等の当公廷における自供、領置物件及び当公廷における証人草竹ハルヱ、森下恒子等の供述並びに同人等の警察官検察官等に対する各供述調書等に徴してこれを認定し得るが被告人等の右物品の授受が果して伊藤候補のために投票及び選挙運動をなすことの請託を容れその意思に基いてなされたとの点については被告人等の警察官及び検察官等に対する自供調書以外には他にこれを裏付けすべき的確なる証拠資料を認め難いと思料するから刑事訴訟法第三百十九条第二項に則り、被告人等の右自供調書のみでは被告人等を有罪とすべき証拠資料となし難い旨説示し結局右被告人等関係の公訴事実は犯罪の証明がないとして無罪を言渡したのである。しかし自白の補強証拠は必ずしも自白にかかる犯罪事実の客観的主観的構成要件の全部にわたつてもれなくこれを裏付けるものであることを要せず自白にかかる事実の真実性を保証し得るものであれば足りるのであつて、本件において前示供与の趣旨の認識に関し右被告人等の警察官及び検察官に対する自白調書の外に直接的確に該認識の存在を肯定し得る資料がないにしても本件犯罪の客観的構成要件たる物品の授受等の事実を裏付するに足る原判決摘記の如き証拠等が存する以上これを綜合して以て右自白の真実性を保証し得るかどうかを判断し、もしその真実性を認め得る場合には以上の資料等を補強証拠とすることにより該自白調書をも有罪証拠として援用し得るものと解すべきところ記録を調査すると原判決が物品授受の事実認定に引用する原審公廷における証人草竹ハルヱ森下恒子の供述及び同人等の警察官検察官に対する各供述調書(殊に論旨に掲げる供述内容)領置物件は右被告人等の前示供与の趣旨を認識した事実についての自白の真実性を十分保証し得るに足るように認められるのである。されば原判決がかゝる補強証拠の存在を顧みずたやすく右被告人等の警察官、検察官に対する自供調書を有罪とすべき証拠となし得ないと断定し無罪を言渡したのは結局刑事訴訟法第三一九条第二項の解釈を誤り延いて有罪たるべき事実を誤認した疑あるに帰し右違法は明かに判決に影響を及ぼすから原判決はこの点においても破棄を免れず本論旨も理由がある。

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